藤沢周平「山桜」は海坂藩の下級武士がモデルです。

藤沢周平さんの短編小説「山桜」が映画化されました。
主演の野江に田中麗奈、相手役の剣士に東山紀之。
藤沢周平原作の山桜の舞台は庄内藩をモデルにした海坂藩です。
藤沢周平 山桜は藤沢周平の短編集「時雨みち」に収められています。

藤沢周平の作品はこれまでに「蝉しぐれ」「たそがれ清兵衛」「武士の一分」など海坂藩の
下級武士が主人公の映画でしたが、今回の藤沢周平 山桜は女性が主人公です。
再婚相手とうまく折り合わず、疎んじられている野江(田中麗奈)は、ある日山桜を折ろうとして
手を伸ばした時、昔から野江に好意を寄せていた武士、手塚弥一郎(東山紀之)に出会う。
その武士が、かつて再婚話の時に縁談の相手だったことを始めて知ります。
こんな清清しい男性に好意をもたれていたことを喜び、嫁ぎ先でもしっかり頑張ろうと生きる希望が
沸いてくる野江でした。

その後手塚弥一郎が悪政を計画する組頭を斬って出頭したことを知り、それがもとで結局2度目も
離縁して野江は実家に帰ります。
藤沢周平の山桜はここから主人公野江の女らしさを藤沢周平の女性像として浮き彫りにしてゆきます。

藤沢周平 山桜の主人公は弥一郎の家を訪れます。

藤沢周平 山桜はここからが見せ場です。
2度目の嫁ぎ先から離縁になって実家に帰った野江。手塚弥一郎は獄舎に入ったままで
様子が分からない野江は思い切って手塚弥一郎の家に向かいます。
手には山桜を持って。家には弥一郎の母親が一人でいました。

母親は言います。「いつかあなたが、こうしてこの家を訪ねてみえるのではないかと、
心待ちにしておりました。さあ、どうぞお上がりください」
・・・履物を脱ぎかけて、野江は不意に式台に手をかけると土間にうずくまった。
ほとばしるように、眼から涙があふれ落ちるのを感じる。とり返しのつかない回り道をしたことが、
はっきりとわかっていた。
ここが私の来る家だったのだ。この家が、そうだったのだ。なぜもっと早く気づかなかったのだろう。
これが藤沢周平 山桜短編小説の最後のクライマックスの部分です。

野江が式台に手を置いたまま、身をよじらすように泣く様子が浮かんでくるようです。
でもその泣いている中には今までの後悔と供は別の、ここに嫁ぐのだという希望が見えているようです。

藤沢周平 山桜は庄内地方の海坂藩が舞台です。

藤沢周平 山桜の撮影もクランクアップしいよいよ来年の初夏に公開だそうです。
撮影は、鶴岡市羽黒町松ケ岡にある庄内映画村のオープンセットなどで行われました。

庄内は藤沢周平 山桜の藤沢周平の生まれ故郷です。
羽黒山、湯殿山、月山の出羽三山に囲まれて、中心部を清流赤川が流れています。
この庄内を藤沢周平は「海坂藩」として多くの作品を書いています。
「三屋清左衛門残日録」「風の果て」「秘太刀馬の骨」などの長編から、「泣くなけい」などの短編まで
藤沢周平の人柄がにじみ出る作品ばかりです。

また一青窈の新曲「栞」が、5月から公開される藤沢周平 山桜の主題歌に起用されることが決定しました。
田中麗奈さんが野江役をどんな風に演じているか楽しみです。

Copyright © 2008 原作 藤沢周平の山桜が映画になります。